Acoustasonic Standard Telecaster 開封レビュー
フェンダーは、2025年1月に開催されたThe 2025 NAMM Showで発表した新シリー『Acoustasonic Standard(アコスタソニック スタンダード)』を、2025年4月18日(金)より日本国内にて販売を開始しました。
『Acoustasonicシリーズ』は、アコースティックとエレクトリックの異なるサウンドキャラクターを1本のギターで自在に操る、革新的なギターです。これまで展開してきた「American Acoustasonic(USA製)」および「Acoustasonic Player(メキシコ製)」に続く新たなラインとして、より手に取りやすい価格帯の『Acoustasonic Standard(インドネシア製)』が登場しました。
このAcoustasonic Standardシリーズでは、テレキャスターとジャズマスターの2モデルをラインアップ。Fenderが誇る設計思想と演奏性を受け継ぎながら、日常的な演奏シーンにもフィットする機能性を備えています。
下の写真は付属のソフトケースです。
本記事では実際に購入したAcoustasonic Standard Telecasterを開封してレビューしながら他のシリーズとの違いについても詳しく説明していきます。
Acoustasonicシリーズとは
Fender Acoustasonicシリーズは、エレクトリックギターとアコースティックギターの垣根を超える革新的なハイブリッドギターです。TelecasterやStratocaster、Jazzmasterといったエレキの代表的モデルのボディ形状に、アコースティックギター的な構造(空洞ボディ+サウンドホール)と先進のピックアップ・電子回路(Acoustic Engine)を融合させることで、一本で多彩なアコースティックトーンとエレキトーンを切り替えられるのが最大の特徴です。
American Acoustasonicシリーズ(アメリカ製)
最上位モデル。2019年に初登場したアメリカ製ラインで、Telecaster, Stratocaster, Jazzmasterの3モデルが展開されています。高級木材と最も高度な電子仕様を備え、5通りのボイシング切替とモデリング(計10種のアコースティックサウンドを実現する“Acoustic Engine”を内蔵します。代表的モデル:American Acoustasonic Telecaster (価格:約$1,999、国内定価¥297,000)。
AmericanシリーズではこのAcoustic Engineにより10種類のボイス(例:ドレッドノートサイズのフルアコースティックの響き、パーラーギターの明るいトーン、ローズウッドボディの暖かいコード音色、そしてシングルコイルTeleのエレキトーンなど)を搭載し、5ポジションの切替とモデュレーションノブで選択します。
Player Acoustasonicシリーズ(メキシコ製)
中価格帯モデル。2021年末に登場したメキシコ製ラインで、Telecasterに続きJazzmasterモデルも追加されています(Stratocasterタイプも将来的に予定)。Americanに比べて電子回路が簡略化され、3通りのボイシングペアを持つ切替(3ウェイスイッチ)×2ボイス(計6種)に簡略化されています。また内部のボディ共鳴センサーを省略し、磁気PU+ピエゾPUの2系統のみ搭載。価格は約$1,199(国内実勢約¥168,300)。
Standard Acoustasonicシリーズ(インドネシア製)
エントリーモデル。2025年4月発売の最新ラインで、TelecasterとJazzmasterの2モデルが同時発表されました(Stratocasterは未発表)。価格は各$599と、このシリーズでは最も手に取りやすい設定です(国内実勢価格 約¥99,000前後)。3ウェイスイッチを廃し、磁気ハムバッカーPU+ピエゾPUのブレンドつまみのみというシンプルな仕様になっています(それでもピエゾ側はプリアンプでエレキアンプにもマッチする音響特性に補正されています)。
Acoustasonic Standard Telecaster
それではAcoustasonic Standard Telecasterを詳しく見ていきましょう。
トップ材にはソリッドシトカスプルースを使用し、ボディは軽量なフルチェンバー構造。FenderとFishmanが共同開発したアナログエレクトロニクスにより、ボリュームとブレンドコントロールによる直感的なサウンドメイキングが可能です。さらに、なじみ深いFenderギターの弾き心地を継承し、快適な演奏体験を実現しています。
ボディ
Telecasterギターにインスパイアされたホロウボディは、豊かな音量感とレゾナンスを備えていて、自宅練習でもステージでもいい音を出してくれます。
ボディはブレイシングが施されたソリッド・シトカ・スプルースにフル・チェンバー構造のナトーで、ネックはナトー、指板はローズウッドという材構成。22フレット仕様で、スケールは648mm(25.5インチ)、ナット幅は42.8mm(1.6875インチ)、指板ラジアスは305mm(12インチ) となっている。カラーはそれぞれにブラック、エイジド・ナチュラル、ハニー・サンバーストの3色が用意されています。
ネック
ローズウッドの指板とブリッジはシルクのように滑らかな手触りで、トーンに温かいハーモニクスを加えます。
ピックアップ
ANALOG ELECTRONICS
FenderとFishmanが設計したエレクトロニクスは、アンダーサドルピエゾピックアップとエレクトリックマグネティックピックアップをシームレスにブレンドする直感的なコントロールノブにより、プレイヤーに幅広く刺激的なトーン。
ACOUSTASONIC STANDARD SHAWBUCKER
Acoustasonic Standardのために特別にデザインされ、ヴォイシングされたこのShawbuckerピックアップは、単体でも、アンダーサドルアコースティックピックアップとブレンドしても使用でき、多彩なハムバッカーサウンド。
スポンサーリンク
サウンドの確認
「アナログなブレンド式」のシンプルサウンド
Acoustasonic Standardは、上位モデルのようなDSP(デジタルモデリング)や複数ボイスの切り替えは搭載していません。その代わり、以下の2つのピックアップを搭載しています。
-
Fishman製ピエゾPU(アンダーサドル):アコースティックトーン担当
-
Fender Shawbucker磁気ハムバッカーPU:エレキトーン担当
そして、これらを1つのブレンドノブで連続的にミックスします。下の写真の右がボリューム。左がブレンドコントロールノブです。
ブレンドノブ位置 | 出力されるサウンドの傾向 |
---|---|
左いっぱい | ピエゾのみ → 明るくクリアなアコースティック系サウンド |
中央 | ピエゾ + Shawbucker → 生っぽさと芯のある太さのバランス |
右いっぱい | Shawbuckerのみ → ウォームなハムバッカー的なエレキトーン |
アコギサウンドは「キレイめ・少し硬め」
-
生アコギほどの「空気感」は無いですが、ライン録り向きのクリアなトーンが出ます。
-
ピエゾPU特有の高域にピーンとした硬さがあり、特にストロークよりアルペジオやバッキングに合うという評価もあります。
-
Jazzmasterモデルの方がボディが大きく共鳴も豊かで、アコギっぽさを強く感じやすいです。
エレキトーンは「太くクリーン」
-
Shawbucker搭載なのでシングルPUよりも太く、温かいトーン。
-
エフェクターをかければ歪み系も対応可能(ただし構造上フィードバックしやすい点に注意)。
-
ハムらしい「押し出し感」と「サスティーン」はしっかり感じられる一方、箱鳴りによる自然な倍音もあり、空気を感じるトーンともいえます。
実用サウンド例
シチュエーション | ブレンドノブ位置 | 得られるサウンド |
---|---|---|
弾き語り / ソロ演奏 | 左~中央 | アコースティック寄りで広がり感あり |
ジャズやポップスバッキング | 中央 | 両PUのいいとこ取り、芯のある温かさ |
歪ませてバンド演奏 | 右(エレキ寄り) | 太いハムPUらしいクリーン〜クランチ |
他シリーズとの比較(サウンド面)
比較ポイント | Acoustasonic Standard | Player / American |
---|---|---|
アコギ音のリアルさ | △ ピエゾのみ | ◎ DSPで複数のアコギ音を再現 |
エレキ音の多彩さ | ◯ ハムバッカーで太め | ◎ PU種別が選べる(例:Tele/Strat系) |
操作性(わかりやすさ) | ◎ シンプル | △ スイッチとノブ操作が複雑め |
音作りの幅 | △ 限定的(2PUブレンド) | ◎ 最大10種類の音色切り替え可能 |
背面
背面には9V電池を入れるところがあります。アンプで音を出すには電池が必要ですのでご注意ください。
仕様一覧
Acoustasonic Standard Telecasterの使用一覧になります。
Body Material | Nyatoh |
---|---|
Body Shape | Acoustasonic® Telecaster® |
Body Finish | Satin Urethane |
Body Top | Solid Sitka Spruce |
Neck Finish | Satin Urethane |
Neck Material | Nyatoh |
Neck Shape | Modern “Deep C” |
Scale Length | 25.5” (64.77 cm) |
Fingerboard Material | Rosewood |
Fingerboard Radius | 12” (305 mm) |
Fret Size | Medium Jumbo |
Number of Frets | 22 |
Truss Rod Nut | 4 mm Hex |
Nut Width | 1.6875” (42.86 mm) |
Nut Material | Graph Tech® TUSQ® |
Truss Rod | Dual-Action Head Adjust |
Position Inlays | Ivory Dot |
Controls | Master Volume, Blend |
Special Electronics | 2-pickup configuration: Under-Saddle Piezo, Acoustasonic Shawbucker Magnetic |
Bridge Pins | Black Plastic |
Bridge | Modern Asymmetrical |
Tuning Machines | Fender® Standard Cast/Sealed with Hex Buttons |
Hardware Finish | Chrome |
Strings | Fender® 70CL 80/20 Bronze (.011-.052 Gauges) |
弦交換
アコスタソニックにはアコギ弦が張られていますが、私はエレキ弦に変更しました。エレキの方が引きやすくチョーキングなどもしやすいからです。
エレキ仕様ではなく、ブリッジのピンを抜かないといけないので、MUSIC NOMAD MN219 ブリッジピン抜き ピンプラーのピン抜きを用意しました。
|
あと、弦交換の際にペグを簡単に回せる便利な商品も下に紹介しておきます。
まとめ
Acoustasonic Standardのサウンドは:
-
シンプルで直感的な操作性
-
アコースティックっぽさ+エレキの太さの融合
-
初心者でも使いやすく、ライブ・宅録・作曲に最適
といった特徴があります。
本格的なアコギ代わりというよりも、「持ち替えずに両方の雰囲気が欲しい」という人にぴったりです。アナログブレンド方式ゆえ、エフェクターとの相性も良く、音作りの幅は自分次第です。
スポンサーリンク
ネットでの購入(価格)
発売開始以来ものすごい人気で、2025年5月現在は楽器店でも在庫がないところが多くなっているようです。Standardが圧倒的に安いです。
以下はシリーズの参考価格になります。
モデル名 | 参考価格(円) |
---|---|
Acoustasonic Standard Telecaster | 約99,000円 |
Acoustasonic Player Telecaster | 約178,000円 |
American Acoustasonic Telecaster | 約248,000円 |
American Acoustasonic Jazzmaster | 約222,750円 |
American Acoustasonic Stratocaster | 約247,500円 |
価格は為替レートや販売店によって変動する可能性があります。最新の価格情報は各販売店の公式サイトをご確認ください。気になっている方は早めにチェックしてみてください。